日別アーカイブ: 2017年8月24日

医師の意見書

交通事故の案件では,被害者が自分の損害が賠償されるべきことについて立証

責任を負います。

 

多くの交通事故事案では争いになりませんが,事故と負傷との因果関係や,

後遺障害の内容,程度について争われた場合等には,医師の意見書を提出

することがあります。

 

被害者側が提出する場合だけでなく,加害者側からも,医師の意見書が提出

されることがあります。

特に訴訟等になった場合には,私の経験上,非常に多くの場合に医師の意見書が

提出されているように感じます。

 

加害者側が提出する意見書は,ほぼすべて被害者に不利な意見が記載されています。

被害者に有利な内容が一部記載されていることもありますが,ごく稀です。

本当に稀に,これで出していいのか?というような意見書が出されることがあり

ますが。。。

 

加害者側から意見書が提出された場合,被害者側の主張を認めさせるためには,

加害者側から提出された意見書の内容を争わなければなりません。

 

争う方法は様々なものがありますが,どの手段を採用するかは,費用対効果の

観点から検討します。

加害者側から先に意見書が提出された場合には,被害者側からも医師の意見書を

提出することが考えられます。

この場合,いずれの意見書の方が信用できるのか,という問題が生じます。

 

被害者側の意見書の作成者が,事故当初から継続して治療を担当していた

主治医である場合には,被害者側の提出した意見書の作成者が,被害者の

身体を直接診察し,治療経過,症状経過等を最もよく把握している主治医

であることを指摘します。

加害者側の意見書に対しては,作成者が,被害者の身体を直接診察したこと

もなく,単にカルテ等書面上の記載だけをもとにして作成されていることを

指摘します。

その上で,情報量の差からして,明らかに,主治医の作成した意見書の方が

信用性が高いことを主張します。

 

あくまでも一つの例ですが,主張はしやすいですし,誰から見ても否定しき

れないものだと思います。

 

ただし,被害者側の意見書の作成者も主治医でない場合には使えません。

主治医の意見書であったとしても,途中で通院先が変更されているなどし,

主治医の診療期間が短い場合には,使いづらくなります。

 

 

主治医以外でも意見書の作成をする医師はいますので,上記の主張が使え

ない場合も増えていると思います。

 

そのような場合には,対応方法を変更しなければなりません。

 

一つの対応方法の例としては,加害者側から提出された意見書を医師に

渡し,そのうえで,医学的観点から反論する意見書の作成を依頼する

方法が考えられます。

 

これにより,加害者側の意見書には,医学的な観点から問題点がある

ことを指摘できます。

被害者側の意見書は,医学的な観点から意見が記載されており,特段

問題点はないので信用でき,相対的に信用性が高いと主張できます。

 

誰が見ても明らかに間違っているような点がある場合には,あえて

医師に意見書の作成を依頼しない場合もあります。

文献等を提出するだけで足りる場合には,文献を提出し,それをもとに

主張するだけの場合もあります。

 

当然,実際の事案に応じて適切な対応方法が何かは変わりますし,

上記の対応をとるにしても,どのような内容にするかは変わります。

 

被害者側の主張に対しては,加害者側から当然反論ができますので,

それにどのように対応するかも事案により変わります。