任意整理

弁護士の仕事の一つに任意整理があります。

 

任意整理は、個別に債権者と交渉し、残債務の返済条件を決めるものです。

各債権者ごとに一定の傾向があるので、それを踏まえて交渉するとよい結果となりやすいと思います。

交渉に際しては、各債権者ごとの傾向と相談者の方の特性を踏まえて対応します。

ただ、各債権者の対応は、その時によって異なりますので、そのときその債権者がどういう方針をとっているかも踏まえて対応します。

それ次第では、そもそも任意整理ではなく破産や個人再生といった法的整理を選択する方が良いこともあります。

 

コロナ禍で、全体的に任意整理を希望されて相談に来られる方が減少した印象でしたが、最近は、やや任意整理希望の方が増えたように感じます。

多くの方の収入が減少し、任意整理が厳しい状況が続いていましたが、最近は収入も戻り、任意整理ができるようになったという見方もできるかもしれません。

もしかしたら、これまでは任意整理の必要がなかった方が、収入の減少や物価高により生活が厳しくなり、任意整理せざるを得なくなったという見方もできるかもしれません。

もし、後者であるとすれば、今後、また任意整理が減少し、破産、個人再生希望の方が増えるかもしれませんし、そもそも、任意整理、破産、個人再生の全てが増加するかもしれません。

モビットと三井住友カードの合併

債務整理を取り扱っている弁護士であれば把握している可能性が高いですが、SМBCモビットと三井住友カードが7月1日付で合併しました。

これにより、モビットは消滅し、三井住友カードだけが会社として存続することになりました。

この合併は、既に昨年に発表されていましたので、債務整理を取り扱っている弁護士の多くは、だいぶ前から把握していると思います。

両社の合併に伴い、モビットの振込先口座名が変更されます。

といっても、頭のカ)が無くなるだけのようですし、しばらくの間は、変更前の口座名での入金も受け付けられるようです。

今のところ、この変更に伴う入金トラブル等は、私の知る限り、生じていないようです。

債務整理の対象会社としてよく名前の挙がる会社ではあるので、入金トラブルが生じると、多くの債務者の方に影響が出るように思います。

 

なお、来年には、SMBCファイナンスサービスも三井住友カードと合併し、消滅します。

こちらも同様に、振込先口座名が変更されるのではないかと思いますので、今回同様、トラブル入金に関するトラブルなく進むとよいと思います。

SМBCの名称がつく会社は、他にSMBCコンシューマーファイナンスもあり、ちょっと多いなと感じていましたので、今回の一連の合併で整理されると名称がわかりやすくなるように思います。

債務者の方にとってはわかりやすい方が安心できてよいです。

 

他にも、今後、合併等により口座名義が変更される会社が生じてくると思いますが、いずれもトラブルなく進むとよいと思います。

改正電気通信事業法

今月の16日から、改正電気通信事業法が施行されます。

電気通信事業法は、電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする法律です。

この名称からは、いわゆる携帯キャリア会社やNTT等に適用される法律であり、自社とは関係ないと考える方が多いと思います。

 

ところが、電気通信事業法は、多くの方が思っているよりも適用範囲の広い法律です。

電気通信事業者として届け出をした会社の一覧は、総務省のホームページに掲載されています。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/tsuushin04_01.html

 

これを見ると、おそらく多くの方が思っているよりもはるかに多数の会社が登録されています。

 

WEB、アプリなどのサービスを提供する場合には、電気通信事業法が適用される可能性があります。

登録をせずに電気通信事業を営んだ場合、3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

懲役と罰金は併科される可能性もあります。

自社の提供するサービスが電気通信事業法の適用対象になるかは、サービス提供前によく確認をされるべきだと思います。

顧問弁護士をつけている会社は、一度確認をいただくのもよいかもしれません。

 

相続土地国庫帰属法

相続土地国庫帰属法が先月から開始されています。

この法律は、主に所有者が不明な土地の発生を防止することを目的とするものです。

相続等によって土地を取得した人が、法務大臣の承認を得て土地を国に譲り渡す制度です。

 

制度の利用は、相続等によって土地を取得した人に限定されています。

土地を国に譲り渡すことは、土地の所有に伴う権利だけではなく義務や負担も譲り渡すことにもなります。

国が負う義務や負担は、最終的に国民の負担につながるため、一定の制限をかけたものと思われます。

 

この制度の対象となる土地は、限定されており、一定の要件を充たさなければ法務大臣の承認が得られません。

例えば、建物が存在する土地がこれに該当します。

ここにいう「建物」に該当するかは、土地に存在する建築物が「屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの(不動産登記規則第111条)」に該当するかどうかによって判断するとされています。

建物がある場合が制度の対象外とされているのは、土地の管理に過分の費用又は労力を要するためであると思われます。

 

法務大臣の承認が得られた場合、制度を利用する人は、負担金を納付しなければなりません。

負担金の額は、法務大臣から通知されます。

負担金を納付しない場合、承認は失効します。

 

相続土地国庫帰属制度は、今後どの程度利用されるか、また今後適用対象がどこまで拡大されるか等、なかなか興味深い制度です。

適用事例も徐々に出てくると思いますので、弁護士としては今後の動向が気になります。

ヘルメット着用義務

令和5年4月1日から、自転車の運転者にヘルメット着用の努力義務が課されるようになりました。

 

自転車運転者のヘルメット着用については、道路交通法に定められています。

道路交通法の改正により、同法63条の11第1項が「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」と定めるようになりました。

あくまでも努力義務にとどまるため、着用していないことが直ちに違法というわけではなく、罰則が科されることはありません。

この改正により、自転車利用者の意識がどの程度変わるかは今後の状況次第と思われます。

 

もともと、自転車利用者の事故が多発しており、弁護士への相談としても、自転車利用者の交通事故の相談はかなり多くなっていました。

中でも、ヘルメット非着用の事故の場合、自転車利用者が重傷を負い、後遺障害が生じるなどによって損害額が高額になることが多くなります。

ヘルメット非着用の場合、自転車運転者の過失として考慮されることもあり、過失割合が争われることもあって、特にもめやすい類型といえます。

 

後遺障害により長年にわたり症状に苦しむ方も多くいますので、そのような事態を避けるためにはヘルメットの着用が有用です。

揉め事を避けるためにも、自らを守るためにも、自転車利用時にはヘルメットを着用する方がよいと思います。

通訳

昨日は、東京で桜の開花が発表されました。

昨日はやや寒かったので桜が開花するというのは意外でした。

日本全国で東京が一番に開花したようです。

九州地方などより西の方が開花が早いイメージがありましたが、東京が一番早いこともあるのですね。

過去にも2020年など、桜の開花について東京が一番早かったことがあるようです。

 

弁護士が仕事をするうえで、通訳の方の協力を得ることがあります。

外国籍の方の相談に通訳の方が同席することもありますが、比較的通訳の方の協力を得ることが多いケースとして刑事事件があります。

逮捕された人が外国籍の場合、日本語が十分に理解できないことがあります。

その場合、通訳の方の協力を得る必要があります。

 

通訳の方は色々な方がいます。

もともと日本で生まれて外国語を勉強されている方もいれば、もともと外国で生まれて日本に来た方もいます。

時にはある程度日本語が理解できる方もいるので、その場合は主に日本語で説明をしながら、適宜通訳の方に補充的に外国語での説明をしていただくこともあります。

通訳の方が誤った翻訳をすると、弁護士の説明が正しく伝わらなかったり、弁護士が本人の言っていることを誤って理解してしまったりする可能性があります。

そのため、通訳の方の果たす役割は相当に重要といえます。

 

学校の先生の残業代請求

弁護士が相談を受けるものの一つとして、残業代請求があります。

先日、公立の小学校の教諭が残業代等の支払いを求めた裁判の最高裁での判断が出されました。

最高裁は、教諭側の上告を退けて教諭側の敗訴が確定しました。

公立の小学校の教諭の残業については、今後も残業代は支払われないこととなりそうです。

 

公立の小学校の教諭の残業代については、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法という法律(給特法と呼ばれたりします。)に規定がされています。

同法の第3条第2項には、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」と規定されています。

法律で支払わないと規定されている以上、なかなか教諭側の主張は認められづらいのだろうという印象にはなりますね。

 

一般の会社では、労働基準法により、残業代の支払いが会社に義務付けられています。

公務員については、その職務の特殊性から、一般の会社とは異なった規定がされていることがあります。

給特法の第1条には、「この法律は、国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定めるものとする。」と規定されておりますので、公務員であること(特に教育職員であること)の特殊性から、一般の会社とは異なって残業代が支払われないのだろうと思います。

立法の経緯などもみますと、教師一人一人の自発性、創造性という言葉が多用され、その上で勤務実態の把握の困難さなども指摘されています。

弁護士などの専門家に適用され得る裁量労働制と同じようなイメージでしょうか。

 

この法律自体は、昭和47年1月1日から施行されているようですので、だいぶ古い法律といってよいと思います。

この規定を今後も適用してよいかは、引き続き議論がされるだろうと思います。

電車賃値上げ

東京の電車賃も一部値上げされるようですね。

 

昨今、様々な物の価格が値上がりしています。

生活に必要な物も多くが値上がりしており、多くの家庭の家計に打撃を与えています。

自動販売機の飲料等も気づけば値上がりしていますし、お店においてある商品もだいぶ値上がりした感じがします。

その中で、東京の電車賃も値上げされるようです。

既に他の都道府県では、電車賃の値上げの話が出ていましたので、予想はされていたと思います。

 

ただ、値上げの理由は、インフレというよりも駅のバリアフリー設備の整備費用といわれているようです。

単に物価高を理由とするよりも、バリアフリー化のためという理由を前面に出した方が値上げも受け入れられやすいのでは、という考えもあるかもしれません。

 

最近は裁判のWEB化により、だいぶ裁判所に行く機会も減ったように思います。

各弁護士事務所もWEB対応が進んでおり、今までは事務所に訪問していた管財人面談や個人再生委員との面談も、WEBを利用して行われることが増えてきたように感じます。

法曹関係以外の会社でも、WEB化はだいぶ進んでいるようですので、電車賃の値上げの影響はそこまでではないかもしれません。

私としても、以前と比べて電車を利用する機会は減っているので、電車賃の値上げによる打撃はやや少なく済みそうな気がします。

 

給料ファクタリング

先日、給料ファクタリングに関する最高裁の判断が出されていました。

 

最高裁は、給料ファクタリングを貸金業法と出資法が定める貸付けに該当するとしました。

 

そもそもファクタリングは、金融庁によれば、債権買取サービスであり、資金調達の一手段であって、法的には、債権譲渡とされる契約とのことです。

通常は、企業の資金調達の一つの方法として使われるようです。

給与のファクタリングは、個人向けのファクタリングであり、給与債権を買い取って、買い取った債権を基に会社に対して給与の支払を求めるようです。

給与ファクタリングは、金融庁から貸付に該当するとの指摘を受けており、今回の最高裁の判断は金融庁が示した判断を追認するような位置づけになるかと思います。

 

給与ファクタリングは、いわゆる金銭消費貸借のようなシンプルなお金の貸し借りではないので、貸付には該当しないとして貸金業法の適用を受けないとして貸金業者以外でも実施しているところはあったようです。

給与ファクタリングの利用者は一定数存在することを考えれば、給与ファクタリング自体の必要性はあるのだと思います。

適切な形で実施されるようになればよいように思います。

なお、譲渡された債権について、雇用していた会社としては、どこに支払いをするべきか判断が難しいケースがあるかと思います。

支払先を間違えると再度同義務が生じますので、弁護士に相談するなどして慎重に判断する必要があるように思います。

2024年問題

2024年問題といわれる問題があります。

2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年、つまり来年の4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働の上限規制により発生する様々な問題のことです。

 

2024年問題の中には、弁護士としてかかわる可能性のある問題も多数あります。

 

例えば、運送会社の中には、収益性の悪化により倒産するところが増えるのではないかといわれています。

多くの運送会社は、従業員の長時間労働により売上を確保していました。

長時間労働が規制されると、現状の人員で運べる荷物の量が減ってしまうため、売り上げが減少することが見込まれています。

売上の減少に伴い、利益も減少してしまうため、赤字になってしまい、倒産する可能性があるのです。

 

影響を受けるのは会社だけではありません。

個々の従業員についても、同様の懸念があります。

規制を超える時間就労していた従業員は、労働時間が減少する結果、収入が減少することが見込まれます。

収入が減少した結果、支出が収入を上回るようですと、家計が赤字になってしまい、借り入れ等が増えてしまう可能性があります。

支出が収入を大幅に上回るようですと、破産しなければならない可能性も出てきてしまいます。

 

2024年問題は、会社、個人ともに大きな影響を受ける可能性があるのです。