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相続土地国庫帰属法
相続土地国庫帰属法が先月から開始されています。
この法律は、主に所有者が不明な土地の発生を防止することを目的とするものです。
相続等によって土地を取得した人が、法務大臣の承認を得て土地を国に譲り渡す制度です。
制度の利用は、相続等によって土地を取得した人に限定されています。
土地を国に譲り渡すことは、土地の所有に伴う権利だけではなく義務や負担も譲り渡すことにもなります。
国が負う義務や負担は、最終的に国民の負担につながるため、一定の制限をかけたものと思われます。
この制度の対象となる土地は、限定されており、一定の要件を充たさなければ法務大臣の承認が得られません。
例えば、建物が存在する土地がこれに該当します。
ここにいう「建物」に該当するかは、土地に存在する建築物が「屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの(不動産登記規則第111条)」に該当するかどうかによって判断するとされています。
建物がある場合が制度の対象外とされているのは、土地の管理に過分の費用又は労力を要するためであると思われます。
法務大臣の承認が得られた場合、制度を利用する人は、負担金を納付しなければなりません。
負担金の額は、法務大臣から通知されます。
負担金を納付しない場合、承認は失効します。
相続土地国庫帰属制度は、今後どの程度利用されるか、また今後適用対象がどこまで拡大されるか等、なかなか興味深い制度です。
適用事例も徐々に出てくると思いますので、弁護士としては今後の動向が気になります。
ヘルメット着用義務
令和5年4月1日から、自転車の運転者にヘルメット着用の努力義務が課されるようになりました。
自転車運転者のヘルメット着用については、道路交通法に定められています。
道路交通法の改正により、同法63条の11第1項が「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」と定めるようになりました。
あくまでも努力義務にとどまるため、着用していないことが直ちに違法というわけではなく、罰則が科されることはありません。
この改正により、自転車利用者の意識がどの程度変わるかは今後の状況次第と思われます。
もともと、自転車利用者の事故が多発しており、弁護士への相談としても、自転車利用者の交通事故の相談はかなり多くなっていました。
中でも、ヘルメット非着用の事故の場合、自転車利用者が重傷を負い、後遺障害が生じるなどによって損害額が高額になることが多くなります。
ヘルメット非着用の場合、自転車運転者の過失として考慮されることもあり、過失割合が争われることもあって、特にもめやすい類型といえます。
後遺障害により長年にわたり症状に苦しむ方も多くいますので、そのような事態を避けるためにはヘルメットの着用が有用です。
揉め事を避けるためにも、自らを守るためにも、自転車利用時にはヘルメットを着用する方がよいと思います。
通訳
昨日は、東京で桜の開花が発表されました。
昨日はやや寒かったので桜が開花するというのは意外でした。
日本全国で東京が一番に開花したようです。
九州地方などより西の方が開花が早いイメージがありましたが、東京が一番早いこともあるのですね。
過去にも2020年など、桜の開花について東京が一番早かったことがあるようです。
弁護士が仕事をするうえで、通訳の方の協力を得ることがあります。
外国籍の方の相談に通訳の方が同席することもありますが、比較的通訳の方の協力を得ることが多いケースとして刑事事件があります。
逮捕された人が外国籍の場合、日本語が十分に理解できないことがあります。
その場合、通訳の方の協力を得る必要があります。
通訳の方は色々な方がいます。
もともと日本で生まれて外国語を勉強されている方もいれば、もともと外国で生まれて日本に来た方もいます。
時にはある程度日本語が理解できる方もいるので、その場合は主に日本語で説明をしながら、適宜通訳の方に補充的に外国語での説明をしていただくこともあります。
通訳の方が誤った翻訳をすると、弁護士の説明が正しく伝わらなかったり、弁護士が本人の言っていることを誤って理解してしまったりする可能性があります。
そのため、通訳の方の果たす役割は相当に重要といえます。
学校の先生の残業代請求
弁護士が相談を受けるものの一つとして、残業代請求があります。
先日、公立の小学校の教諭が残業代等の支払いを求めた裁判の最高裁での判断が出されました。
最高裁は、教諭側の上告を退けて教諭側の敗訴が確定しました。
公立の小学校の教諭の残業については、今後も残業代は支払われないこととなりそうです。
公立の小学校の教諭の残業代については、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法という法律(給特法と呼ばれたりします。)に規定がされています。
同法の第3条第2項には、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」と規定されています。
法律で支払わないと規定されている以上、なかなか教諭側の主張は認められづらいのだろうという印象にはなりますね。
一般の会社では、労働基準法により、残業代の支払いが会社に義務付けられています。
公務員については、その職務の特殊性から、一般の会社とは異なった規定がされていることがあります。
給特法の第1条には、「この法律は、国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定めるものとする。」と規定されておりますので、公務員であること(特に教育職員であること)の特殊性から、一般の会社とは異なって残業代が支払われないのだろうと思います。
立法の経緯などもみますと、教師一人一人の自発性、創造性という言葉が多用され、その上で勤務実態の把握の困難さなども指摘されています。
弁護士などの専門家に適用され得る裁量労働制と同じようなイメージでしょうか。
この法律自体は、昭和47年1月1日から施行されているようですので、だいぶ古い法律といってよいと思います。
この規定を今後も適用してよいかは、引き続き議論がされるだろうと思います。
電車賃値上げ
東京の電車賃も一部値上げされるようですね。
昨今、様々な物の価格が値上がりしています。
生活に必要な物も多くが値上がりしており、多くの家庭の家計に打撃を与えています。
自動販売機の飲料等も気づけば値上がりしていますし、お店においてある商品もだいぶ値上がりした感じがします。
その中で、東京の電車賃も値上げされるようです。
既に他の都道府県では、電車賃の値上げの話が出ていましたので、予想はされていたと思います。
ただ、値上げの理由は、インフレというよりも駅のバリアフリー設備の整備費用といわれているようです。
単に物価高を理由とするよりも、バリアフリー化のためという理由を前面に出した方が値上げも受け入れられやすいのでは、という考えもあるかもしれません。
最近は裁判のWEB化により、だいぶ裁判所に行く機会も減ったように思います。
各弁護士事務所もWEB対応が進んでおり、今までは事務所に訪問していた管財人面談や個人再生委員との面談も、WEBを利用して行われることが増えてきたように感じます。
法曹関係以外の会社でも、WEB化はだいぶ進んでいるようですので、電車賃の値上げの影響はそこまでではないかもしれません。
私としても、以前と比べて電車を利用する機会は減っているので、電車賃の値上げによる打撃はやや少なく済みそうな気がします。
給料ファクタリング
先日、給料ファクタリングに関する最高裁の判断が出されていました。
最高裁は、給料ファクタリングを貸金業法と出資法が定める貸付けに該当するとしました。
そもそもファクタリングは、金融庁によれば、債権買取サービスであり、資金調達の一手段であって、法的には、債権譲渡とされる契約とのことです。
通常は、企業の資金調達の一つの方法として使われるようです。
給与のファクタリングは、個人向けのファクタリングであり、給与債権を買い取って、買い取った債権を基に会社に対して給与の支払を求めるようです。
給与ファクタリングは、金融庁から貸付に該当するとの指摘を受けており、今回の最高裁の判断は金融庁が示した判断を追認するような位置づけになるかと思います。
給与ファクタリングは、いわゆる金銭消費貸借のようなシンプルなお金の貸し借りではないので、貸付には該当しないとして貸金業法の適用を受けないとして貸金業者以外でも実施しているところはあったようです。
給与ファクタリングの利用者は一定数存在することを考えれば、給与ファクタリング自体の必要性はあるのだと思います。
適切な形で実施されるようになればよいように思います。
なお、譲渡された債権について、雇用していた会社としては、どこに支払いをするべきか判断が難しいケースがあるかと思います。
支払先を間違えると再度同義務が生じますので、弁護士に相談するなどして慎重に判断する必要があるように思います。
2024年問題
2024年問題といわれる問題があります。
2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年、つまり来年の4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働の上限規制により発生する様々な問題のことです。
2024年問題の中には、弁護士としてかかわる可能性のある問題も多数あります。
例えば、運送会社の中には、収益性の悪化により倒産するところが増えるのではないかといわれています。
多くの運送会社は、従業員の長時間労働により売上を確保していました。
長時間労働が規制されると、現状の人員で運べる荷物の量が減ってしまうため、売り上げが減少することが見込まれています。
売上の減少に伴い、利益も減少してしまうため、赤字になってしまい、倒産する可能性があるのです。
影響を受けるのは会社だけではありません。
個々の従業員についても、同様の懸念があります。
規制を超える時間就労していた従業員は、労働時間が減少する結果、収入が減少することが見込まれます。
収入が減少した結果、支出が収入を上回るようですと、家計が赤字になってしまい、借り入れ等が増えてしまう可能性があります。
支出が収入を大幅に上回るようですと、破産しなければならない可能性も出てきてしまいます。
2024年問題は、会社、個人ともに大きな影響を受ける可能性があるのです。
2023年
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
2023年になりました。
まだまだコロナも落ち着かず、不安な日々を過ごされている方も多いかと思います。
今年はコロナが落ち着くなどしてよい年になるように願っていますが、あまり楽観視できる状況ではないように思います。
昨年からすでに企業の倒産、個人の法的整理案件は相当に増えてきているように感じられました。
実際事務所で受けている相談の件数も増加傾向にあったようです。
ただ、聞くところによると、今年はさらに増加する見通しだとのことですのでより債務整理の相談は増えるものと思います。
世界的にも今年は低調な見通しとなっており、OECDによれば、主要国の経済成長は、マイナスかわずかにプラスとなっており厳しめな見通しとなっています。
日本だけでなく、他の国でも景気は良くない見込みといってよいと思います。
弁護士の仕事としては債務整理が増える見込みであることから、経営が立ち行かなくなる可能性は低いものと思われますが、それ以外の業務は減少するかもしれません。
企業倒産が増え不景気になることが見込まれるにもかかわらず、物価はかなり上昇しており、様々な物が値上がりしています。
コロナの収束もなかなか見通せない状況ですし、楽観視はできない状況ですが、なんとか乗り越えていきたいですね。
税制改正大綱
今日、令和5年度税制改正大綱が発表されました。
税制改正大綱そのものが何らかの効力を及ぼすものではありませんが、今後、これに沿った法案等が成立することが見込まれます。
課税対象となる人は、税制改正大綱の内容を踏まえたうえで、対応をしなければならなくなる可能性があります。
既に報道等もされているため、ご存知の方も多いかと思いますが、今回の税制改正大綱では、NISAについての変更が盛り込まれています。
これまで120万円であった年間の投資可能額が、年間360万円と3倍の増額されています。
非課税限度額も、これまでの800万円から1800万円と2倍以上に増額されています。
これにより、貯蓄から投資へという流れを作りたいという意向のようです。
日本人の家計の金融資産のうち、いわゆるタンス預金にあたる現金は、2022年3月末時点で105兆円あり、日本国全体でみると投資余力は相当にあるといえます。
また、相続税については、これまで相続開始前3年以内に行われた生前贈与について、相続税の課税価格に加算されていたものが、相続開始前7年以内に伸長されています。
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用するとされていますので、今すぐに影響が出るわけではありません。
ただ、今後生前贈与を考えている方は、生前贈与の時期について、検討する必要があるかもしれません。
いずれも弁護士の仕事に直接影響が出るものではありませんが、相続税に関する改正は、今後の遺産分割や遺言作成等において考慮される可能性があるものであり、弁護士の仕事にも一定の影響が出る可能性があります。
税制改正は、弁護士としても把握しておいた方がよいように思います。
家賃保証会社の契約条項
最高裁判所で家賃保証会社の契約書の使用差し止めが命じられました。
ざっくりとした内容としては2点挙げられます。
1点目は、契約をしてはならないというもの、2点目は契約書用紙の破棄です。
消費者契約法に違反するとされたのは、①支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原契約を解除することができるものとするというもの、②賃料等の支払を2か月以上怠り、保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ、かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができるとするものです。
いずれも、消費者である賃借人と事業者である 被上告人の各利益の間に看過し得ない不均衡をもたらし、当事者間の衡平を害する ものであるから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるという べきであるとされています。
解除に際しては、原則として、催告が必要であり、無催告で解除できる場合は限定的に考えられるべきです。
特に住居は、生活の基盤となる賃借人にとって非常に重要なものであり、これを奪う解除は、相当に慎重に行われるべきといえます。
①の無催告解除は、賃料等及び変動費の滞納が3か月分以上に達したことだけで、賃借人の生活基盤である住居を無催告で奪うものであり、賃借人に酷であるといえます。
また、②については、実質的な自力救済を認めるものであることや、内容が一義的でないこと、賃借人の不利益回避手段が十分でないことなどから、賃借人に酷であるといえます。
保障会社としては、裁判手続きを利用するなどもできますし、必ずしも今回問題となった条項を利用しなくても一定の保護は図られます。
そうである以上、賃借人に大きな不利益を与えてまで保証会社に強い権限を認める必要性はないという考え方は十分にありうると思います。