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解雇理由証明書
従業員を解雇した場合、従業員の求めがあれば、解雇理由証明書を交付しなければなりません。
これは、労基法22条1項に定められた会社の義務です。
労基法22条1項は、労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。としています。
これに反して、解雇理由証明書を交付しなかった場合、労基法120条1号により、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
解雇理由証明書を交付したとしても、「遅滞なく」交付しなかった場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
この「遅滞なく」とは、事情の許す限りできるだけ早く、というニュアンスで使用されます。
そのため、合理的な理由があれば、遅れも許されるものと考えられます。
ただ、合理的な理由と認められるかの判断は難しく、その判断を誤ると、罰金刑を科されるリスクがあります。
業種によっては、罰金刑を科されることで、各種許可等を取り消される可能性があります。
万が一許可を取り消されると、経営上、相当な影響が出る可能性がありますので、従業員から解雇理由証明書の発行を求められた場合には、できる限り早急に対応するべきでしょう。
着替え時間と給与
未払い賃金に関する相談は、弁護士への相談として比較的多いものです。
最近、着替え時間が給与の支払い対象である労働時間に含まれるかが話題になっていました。
着替え時間が労働時間に含まれるか、は比較的以前から問題となっている点であり、いわゆる教科書的な労働法の本にも言及のある論点です。
この問題に言及した判例としては、平成12年3月9日の、三菱重工長崎造船所事件が有名です。
この判例では、まさに、更衣の時間が労働時間に含まれるかが問題となっていました。
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
この労働時間に該当するかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないとされています。
そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるとされています。
この判例では、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていること、その装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたことが指摘され、更衣の時間も労働時間に該当するとされました。
最近は私服可の会社も多くありますが、制服等が定められ、着替えることが必須となっている会社もまだまだ少なくありません。
そのような会社では、制服等の指定を継続するのか、継続するとするならば、着替えの時間を労働時間に含めるべきか、等を検討する必要があります。
労働基準法の改正により、未払い給与の請求権の時効は、5年間に延長されています。
当面経過措置により、時効期間は3年とされていますが、仮に5年分の着替え時間について未払い賃金請求がされると、その額はかなりの額になることが予想されます。
それが、全従業員について生じるとなると、会社の経営に与える影響も少なくありませんので、この件は、かなり慎重に考える必要があると思います。
不逮捕特権
弁護士登録をしている国会議員も少なくありませんが、国会議員には、不逮捕特権と呼ばれる権利があります。
不逮捕特権とは、憲法50条に規定されています。
憲法50条は、「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」としています。
これは、三権分立の考え方からくるもので、行政権や司法権が、立法権を侵害することを回避するために定められているようです。
国会議員であれば逮捕されないと思われている方もいるかもしれませんが、そうではありません。
「国会の会期中」とあるとおり、不逮捕特権は、「国会の会期中」に限られています。
また、「法律の定める場合を除いては」とあるとおり、法律の規定により、会期中であっても逮捕される場合があります。
国会法33条で、「各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。」としているのが「法律の定める場合」にあたります。
そのため、院外での現行犯逮捕の場合や院の許諾がある場合には、会期中であっても逮捕されることがあるのです。
現職の国会議員が逮捕されることはそれほどあることではありません。
その理由の一つは、不逮捕特権にあるといってよいと思います。
自転車と青切符
自転車の交通違反に対する制度が、昨今様々変わっています。
少し前に、自転車への赤切符の適用が強化されました。
今年の4月からは、自転車利用者にヘルメット着用の努力義務化がなされました。
そして、自転車の交通違反に対し、青切符を適用することが検討され始めています。
青切符とは、比較的軽微な交通違反に対して適用されるものです。
行政手続きとして反則金の納付が通告され、違反者が反則金を納付すれば起訴されない、刑事裁判にならないというものです。
期間内に納付しない場合、起訴され、刑事裁判になる可能性があります。
車両の事故は、年々減少傾向にありますが、自転車事故が占める割合は増加していますし、事故件数自体が増加している年もあります。
自転車には、赤切符は適用されていますが、実際に罰則が適用されるケースは少ないという報告もあるようです。
自転車事故を減少させるべく、さらなる取締りの強化が予定されているといえるでしょう。
自転車事故は、場合によっては被害者を死亡させたり、重篤な障害を負わせたりする可能性があります。
取締りの強化により、自転車利用者の意識が向上することで、自転車事故が減少することが期待されます。
任意整理
弁護士の仕事の一つに任意整理があります。
任意整理は、個別に債権者と交渉し、残債務の返済条件を決めるものです。
各債権者ごとに一定の傾向があるので、それを踏まえて交渉するとよい結果となりやすいと思います。
交渉に際しては、各債権者ごとの傾向と相談者の方の特性を踏まえて対応します。
ただ、各債権者の対応は、その時によって異なりますので、そのときその債権者がどういう方針をとっているかも踏まえて対応します。
それ次第では、そもそも任意整理ではなく破産や個人再生といった法的整理を選択する方が良いこともあります。
コロナ禍で、全体的に任意整理を希望されて相談に来られる方が減少した印象でしたが、最近は、やや任意整理希望の方が増えたように感じます。
多くの方の収入が減少し、任意整理が厳しい状況が続いていましたが、最近は収入も戻り、任意整理ができるようになったという見方もできるかもしれません。
もしかしたら、これまでは任意整理の必要がなかった方が、収入の減少や物価高により生活が厳しくなり、任意整理せざるを得なくなったという見方もできるかもしれません。
もし、後者であるとすれば、今後、また任意整理が減少し、破産、個人再生希望の方が増えるかもしれませんし、そもそも、任意整理、破産、個人再生の全てが増加するかもしれません。
モビットと三井住友カードの合併
債務整理を取り扱っている弁護士であれば把握している可能性が高いですが、SМBCモビットと三井住友カードが7月1日付で合併しました。
これにより、モビットは消滅し、三井住友カードだけが会社として存続することになりました。
この合併は、既に昨年に発表されていましたので、債務整理を取り扱っている弁護士の多くは、だいぶ前から把握していると思います。
両社の合併に伴い、モビットの振込先口座名が変更されます。
といっても、頭のカ)が無くなるだけのようですし、しばらくの間は、変更前の口座名での入金も受け付けられるようです。
今のところ、この変更に伴う入金トラブル等は、私の知る限り、生じていないようです。
債務整理の対象会社としてよく名前の挙がる会社ではあるので、入金トラブルが生じると、多くの債務者の方に影響が出るように思います。
なお、来年には、SMBCファイナンスサービスも三井住友カードと合併し、消滅します。
こちらも同様に、振込先口座名が変更されるのではないかと思いますので、今回同様、トラブル入金に関するトラブルなく進むとよいと思います。
SМBCの名称がつく会社は、他にSMBCコンシューマーファイナンスもあり、ちょっと多いなと感じていましたので、今回の一連の合併で整理されると名称がわかりやすくなるように思います。
債務者の方にとってはわかりやすい方が安心できてよいです。
他にも、今後、合併等により口座名義が変更される会社が生じてくると思いますが、いずれもトラブルなく進むとよいと思います。
改正電気通信事業法
今月の16日から、改正電気通信事業法が施行されます。
電気通信事業法は、電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする法律です。
この名称からは、いわゆる携帯キャリア会社やNTT等に適用される法律であり、自社とは関係ないと考える方が多いと思います。
ところが、電気通信事業法は、多くの方が思っているよりも適用範囲の広い法律です。
電気通信事業者として届け出をした会社の一覧は、総務省のホームページに掲載されています。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/tsuushin04_01.html
これを見ると、おそらく多くの方が思っているよりもはるかに多数の会社が登録されています。
WEB、アプリなどのサービスを提供する場合には、電気通信事業法が適用される可能性があります。
登録をせずに電気通信事業を営んだ場合、3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
懲役と罰金は併科される可能性もあります。
自社の提供するサービスが電気通信事業法の適用対象になるかは、サービス提供前によく確認をされるべきだと思います。
顧問弁護士をつけている会社は、一度確認をいただくのもよいかもしれません。
相続土地国庫帰属法
相続土地国庫帰属法が先月から開始されています。
この法律は、主に所有者が不明な土地の発生を防止することを目的とするものです。
相続等によって土地を取得した人が、法務大臣の承認を得て土地を国に譲り渡す制度です。
制度の利用は、相続等によって土地を取得した人に限定されています。
土地を国に譲り渡すことは、土地の所有に伴う権利だけではなく義務や負担も譲り渡すことにもなります。
国が負う義務や負担は、最終的に国民の負担につながるため、一定の制限をかけたものと思われます。
この制度の対象となる土地は、限定されており、一定の要件を充たさなければ法務大臣の承認が得られません。
例えば、建物が存在する土地がこれに該当します。
ここにいう「建物」に該当するかは、土地に存在する建築物が「屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの(不動産登記規則第111条)」に該当するかどうかによって判断するとされています。
建物がある場合が制度の対象外とされているのは、土地の管理に過分の費用又は労力を要するためであると思われます。
法務大臣の承認が得られた場合、制度を利用する人は、負担金を納付しなければなりません。
負担金の額は、法務大臣から通知されます。
負担金を納付しない場合、承認は失効します。
相続土地国庫帰属制度は、今後どの程度利用されるか、また今後適用対象がどこまで拡大されるか等、なかなか興味深い制度です。
適用事例も徐々に出てくると思いますので、弁護士としては今後の動向が気になります。
ヘルメット着用義務
令和5年4月1日から、自転車の運転者にヘルメット着用の努力義務が課されるようになりました。
自転車運転者のヘルメット着用については、道路交通法に定められています。
道路交通法の改正により、同法63条の11第1項が「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」と定めるようになりました。
あくまでも努力義務にとどまるため、着用していないことが直ちに違法というわけではなく、罰則が科されることはありません。
この改正により、自転車利用者の意識がどの程度変わるかは今後の状況次第と思われます。
もともと、自転車利用者の事故が多発しており、弁護士への相談としても、自転車利用者の交通事故の相談はかなり多くなっていました。
中でも、ヘルメット非着用の事故の場合、自転車利用者が重傷を負い、後遺障害が生じるなどによって損害額が高額になることが多くなります。
ヘルメット非着用の場合、自転車運転者の過失として考慮されることもあり、過失割合が争われることもあって、特にもめやすい類型といえます。
後遺障害により長年にわたり症状に苦しむ方も多くいますので、そのような事態を避けるためにはヘルメットの着用が有用です。
揉め事を避けるためにも、自らを守るためにも、自転車利用時にはヘルメットを着用する方がよいと思います。
通訳
昨日は、東京で桜の開花が発表されました。
昨日はやや寒かったので桜が開花するというのは意外でした。
日本全国で東京が一番に開花したようです。
九州地方などより西の方が開花が早いイメージがありましたが、東京が一番早いこともあるのですね。
過去にも2020年など、桜の開花について東京が一番早かったことがあるようです。
弁護士が仕事をするうえで、通訳の方の協力を得ることがあります。
外国籍の方の相談に通訳の方が同席することもありますが、比較的通訳の方の協力を得ることが多いケースとして刑事事件があります。
逮捕された人が外国籍の場合、日本語が十分に理解できないことがあります。
その場合、通訳の方の協力を得る必要があります。
通訳の方は色々な方がいます。
もともと日本で生まれて外国語を勉強されている方もいれば、もともと外国で生まれて日本に来た方もいます。
時にはある程度日本語が理解できる方もいるので、その場合は主に日本語で説明をしながら、適宜通訳の方に補充的に外国語での説明をしていただくこともあります。
通訳の方が誤った翻訳をすると、弁護士の説明が正しく伝わらなかったり、弁護士が本人の言っていることを誤って理解してしまったりする可能性があります。
そのため、通訳の方の果たす役割は相当に重要といえます。