離婚に伴う慰謝料

本日,最高裁判所において,離婚をやむなくされた精神的苦痛に対する慰謝料を

配偶者の不貞相手に対して請求できるかについて判断した判決が出されました。

 

最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき

事柄である。」とし,「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより

当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に

対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともか

くとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負

うことはないと解される。」としました。

 

最高裁の考え方によれば,不貞行為があった場合には,不貞行為を理由とした

慰謝料請求はできますが,離婚したことを理由とする慰謝料請求は必ずしもで

きないこととなります。

 

そのうえで,最高裁は,不貞行為により離婚した場合,不貞相手が不法行為責

任を負うのは,不貞相手が,「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻

関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめ

たものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」と

し,

「夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情が

ない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当」

としています。

 

最高裁の考え方を前提によれば,離婚に伴う慰謝料が認められるケースはかな

り限定的なものになるように感じます。

 

通常は,不貞行為に対する慰謝料を請求するため,今回の件と同様の点が問題

となるケースはそれほど多くはないのではないかと思いますが,一定数は同じ

点が問題となることはあると思われます。

その場合には,今後,「特段の事情」の有無が問題になると思われます。

この「特段の事情」が今後の裁判でどのように認定されるかにより,どの程度

離婚に伴う慰謝料の認定可能性があるのかが変わりますので,弁護士としては

気になるところだと思います。

 

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あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会

厚生労働省では,昨年,あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師及び柔道整復師等の

広告に関し,検討会を開催していました。

厚生労働省のホームページ上では,これまでの検討会の議事録などが公表されています。

直近では,平成30年11月22日に開催された検討会の議事録等が公表されていました。

東京都千代田区霞が関にある,中央合同庁舎で開催されているようです。

 

論点としては,施術所の名称,施術日等の表示,医療保険療養費支給申請の表示,

適応症の表示,料金の表示,開設者・施術者の氏名,年齢,性別,役職等,専門性,

インターネット上のホームページ等であったようです。

詳細は割愛しますが,いろいろな意見が交わされているようです。

ただ,時間は足りないようで,すべての論点に十分な議論ができたわけではないようです。

 

これを受けてか,厚生労働省では,広告規制を見直し,指針を作成するようです。

平成31年に指針が施行,周知され,平成32年から取り締まりが強化される可能性が

あるようです。

どのような指針が作成されるか,それを踏まえて取り締まりがどのように運用されるか,

関係者は注目だと思います。

それ次第で,また,弁護士にもいろいろな相談がくるかもしれません。

講演

今日は,株式会社船井総合研究所の相続・遺言業務研究会の総会に

参加しました。

 

相続・遺言業務研究会には,多数の弁護士が参加して,相続・遺言業務に

ついての研修,勉強を行っています。

本日,相続・遺言業務研究会に参加している弁護士相互の投票によって,

2018年のMVPに弁護士法人心を選んでいただきました。

たくさん勉強させていただき,そこで得た情報をもとにこれまで取り組んできた

ことを大きく評価していただいたものと思います。

 

また,MVPに選ばれたということで,私が30分程度お時間をいただき,

弁護士法人心の相続・遺言への取り組みやその成果についてお話

させていただきました。

 

大変光栄です。

 

弁護士の仕事の中でも,相続・遺言の分野は,対応が難しい点が多い

ように感じます。

特に,たくさんの方が利害関係を有しますので,その間の利益調整や

感情の調整が必要となり,一筋縄ではいかないことが多いと思います。

 

弁護士事務所には,まだ相続・遺言に注力しているところが少なく,

本来必要なはずのリーガルサポートが十分に行き届いていないように

感じます。

これから,高齢化社会が進むにつれて,弁護士の助けを必要とする

方はますます増えると思います。

相続・遺言の分野に弁護士が注力して多くの方を助けられるようにする

ことは,弁護士事務所が取り組むべきことの一つだと思います。

 

今後,事務所として,ますます相続・遺言に注力し,より多くの方に

必要なリーガルサポートを提供したいと思います。

TVCM

本日から,弁護士法人心のテレビCMが始まりました。

 

内容の異なる2種類のCMを作成しております。

東海三県で,毎週水曜日の報道ステーション等で放送されます。

 

テレビCMは,費用はかかりますが,その分,多くの方に事務所のこと,

弁護士という仕事のこと,弁護士がどのような場面でお力になれるかと

いうことを知っていただける,非常に有益なツールだと思います。

 

一般の方に弁護士というものを知っていただき,より身近に感じていた

だくことで,より多くの方にリーガルサービスの提供ができるようになると

思います。

 

弁護士の数は,ここ数年でかなり増加しており,弁護士の知り合いがいる

という方も増えているようです。

それでも,まだまだ多くの方にとって,弁護士は身近な存在ではないと

感じられているようです。

どのようなときに弁護士に相談したほうがよいのか,どの弁護士に相談したら

よいか悩まれる方も多いようにききます。

そういった方が,テレビCMを見ることで,自分の抱える悩み事が弁護士に

相談するべきものなのかどうか,判断できるようになればいいと思います。

 

弁護士に相談するということは,多くの方にとって一生に一度あるかないか

だと思います。

そういった方が,適切にリーガルサポートを受けて,悩み事を解決できる

ようになれば,大変うれしいです。

勾留請求却下

弁護士が対応する仕事の一つに刑事事件があります。

 

先日,当事務所で対応したものについて,検察官の勾留請求が却下された

ものがあります。

 

逮捕されると,翌日には検察庁に行き,勾留請求され,そのさらに翌日に

裁判所に行き,勾留に関する決定がされる,というのが通常の流れです。

逮捕後勾留決定がされるまでには時間があまりなく,初動をいかに迅速に

できるかが重要といえます。

 

接見の時間が遅くなった場合には,深夜に意見書を起案しなければなら

ないことも少なくありません。

 

今回も,逮捕日の夜には接見に行き,当日夜には検察官,裁判所宛の勾留に

関する意見書を作成して,それぞれ適宜のタイミングで提出しました。

検察官の勾留請求自体を止めることはできませんでしたが,裁判官にこちら

の主張が伝わり,勾留請求却下となりました。

 

日本国内では,検察官の勾留請求に対して,ほとんどの場合勾留許可決定が

出されます。

最近は,勾留請求が却下されることも増えてきてはいますが,それでもまだ

まだ多いとはいえません。

 

弁護士の立場からすれば,これで勾留するのはどうなんだろうと思うことも

多々あります。

少しずつ改善してはいますが,今後さらなる改善が必要だと思います。

弁護士の側も,できる限り改善していくよう,継続して努力することが必要

だと思います。

 

相続放棄

弁護士に対する相続に関する相談で比較的頻繁にあるものの一つとして相続

放棄に関する相談があります。

 

多くは,単純に相続放棄に必要な書類を収集して整理し,裁判所に提出する

ことで終わります。

しかし,被相続人が亡くなられてから3か月を経過して相談に来られる方や

3か月経過直前になって相談に来られる方も多数います。

 

相続放棄は,自己のために相続があったことを知った時から3か月以内に

行わなければなりません。

多くの相続人は,被相続人が亡くなられてすぐに被相続人が亡くなられた

ことを知るため,被相続人が亡くなられてから3か月以内に相続放棄の

手続を行わなければなりません。

 

ただし,中には,被相続人が亡くなられてから数か月経過してから被

相続人が亡くなられたことを知る方もいます。

また,例外的ではありますが,被相続人が亡くなられたことは知って

いたが,財産がないと信じていたために相続放棄をしなかったという

方がいます。

 

被相続人が亡くなられたことを知っていたが,財産がないと信じていた

方について,一定の条件のもと,被相続人が亡くなられたことを知って

から3か月が経過しても,相続放棄が認められることがあります。

最高裁昭和59年4月27日判決がそのようなケースで相続放棄を認めて

います。

実際の案件では,様々な資料を添付して,財産がないと信じていたことを

裁判所に主張し,上記最高裁のケースと同様の判断するべき案件であると

構成します。

 

その結果,相続放棄が認められることがあります。

 

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戸籍の取付

相続の案件に対応する場合,戸籍の取付を行うことが良くあります。

戸籍の取付は,弁護士であれば,職務上請求という手段を使用して通常行います。

 

職務上請求は,弁護士等,一部の専門家に認められた手続であり,非常に有効な

手段です。

戸籍の取得をする目的は,主に相続人の確定にあります。

戸籍を辿ることで,相続人が誰かを洗い出すことができます。

ときには,依頼者の方も把握していない相続人が見つかるなどすることもあります。

 

戸籍の取得にどの程度の時間を要するかは,案件によって異なります。

簡単なものであれば,数回請求することで完了しますので1か月もかからず

完了することもあります。

戸籍が何度も移動しているような方がいたり,相続人が多数いたりすると,

何度も職務上請求しなければならず,それだけで何か月もの期間を要する

場合もあります。

 

戸籍を取り付けるだけなので,簡単ですぐ終わるようにも思えますが,実は,

案件によっては非常に時間がかかることもあるのです。

 

相続人の確定のための戸籍の取り付けは,個人の方でもできますが,時間が

かかる場合もありますし,誰が相続人であるかを判断するのが難しい場合もあり

ますので,必要がある場合には,弁護士に相談していただくと安心です。

債権者代位権

債権者代位権については,現行民法でも規定されています。

新しい民法でも,債権者代位権についての規定がありますが,大きく改訂

されるようです。

 

もともと,債権者代位権は,債務者がいわゆる無資力である場合に限り

行使可能と解されていました。

新民法では,「自己の債権を保全するため必要がある」場合に債権者代位

権が行使可能とされています。

この「自己の債権を保全するため必要がある」という言葉について,現行

民法と同様に考えれば,無資力であることを要求していると考えることに

なるでしょう。

現行民法を前提に積み上げられた判例を否定する趣旨ではなさそうです

ので,おそらく,現行民法と同様,債権者代位権は,債務者が無資力で

なければ行使できないことになるのでしょう。

 

また,従来は,債権者代位権の転用といわれていた登記手続請求権の

代位行使について,新民法では,別途条文で規定しています。

 

債権者代位権の規定において,従来の考え方を修正したとみられるのが

債務者の取立てその他の処分の権限等についての規定です。

現行民法では,債権者代位権の行使後は,一定の条件下ではありますが,

債務者は代位された債権を行使できず,第三債務者は債務者に対して

債務を履行することもできないと考えられていました。

しかし,新民法では,明確にこれができると規定しています。

この点は,従来の考え方とは異なるものですので,今後,いろいろな

影響が出てくるかもしれません。

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士業の仕事

いわゆる士業と呼ばれる仕事には様々なものがあります。

弁護士,税理士,司法書士,社会保険労務士等がこれに該当します。

 

一般的に,弁護士は法律のこと,税理士は税金のこと,司法書士は登記のこと,

社会保険労務士は社会保険や給与に関する仕事をしているというイメージを

抱いている人も多くいるようです。

このイメージどおりの仕事をしている士業も多くいますが,実は,そうではない

仕事をしている士業もいるのです。

 

士業の一部は,今,コンサルタントとしての仕事に重点を置いているようです。

そのような士業は,○○士なら○○といった従来イメージされてきた仕事とは異なる

仕事の仕方をしています。

専門家でない一般の方からすれば,自らの抱えている問題は,だれに相談するのが

最も適切かを判断するのは簡単ではありません。

特定の信頼できる誰かに相談すれば,その内容に応じて誰にどう相談するべきか,

どのように解決するのが適切かがわかるというのは,非常に便利です。

そのような観点からすると,士業よりもコンサルタントの方が,より求められる

存在になりやすいのかもしれません。

 

昨今,士業は,人数の増加であったり,仕事の減少であったりを理由に,競争が

激化していると言われています。

それにより,以前は資格さえ取れば一生食べていけるといわれていたこともある

士業もありましたが,今では,多くの士業が,資格だけでは食べていけないと

いわれています。

 

そのために,従来のイメージとは異なった仕事をする士業が増えているのかも

しれません。

消滅時効

現行民法では,債権の消滅時効期間は,通常10年間とされています。

10年間とされているのはあくまで原則であり,例外として1年から5年といった

短期消滅時効も規定されています。

たとえば,ホテルの宿泊料請求権は,民法174条4号により,消滅時効期間は

1年間とされています。

病院に行って診察を受けた場合の診療報酬請求権は,民法170条1号により,

消滅時効期間は3年間とされています。

民法以外の法律で短期の消滅時効が規定されているものがあります。

たとえば,商事債権の消滅時効は,商法522条により,消滅時効期間は5年間と

されています。

ところが,民法の改正により,これらの消滅時効の規定が変更されることになります。

改正民法では,民法第170条から第174条までは削除とされていますので,上記の

民法上の短期消滅時効はなくなります。

また,商事債権の短期消滅時効の規定もなくなります。

代わりに,というわけでもないですが,改正民法では,消滅時効期間について債権者が

権利を行使することができることを知った時から5年間,権利を行使することができる

時から10年間と規定しています。

消滅時効に関する規定の変更は,実務に大きな影響を与える可能性があります。

また,一時的には,各債権に対し,改正前と改正後とどちらの消滅時効規定が適用される

のか,という問題が生じる可能性があります。

 

改正後しばらくの間は,各方面でやや混乱が生じるかもしれません。

消滅時効が問題となった場合には,ご自身で判断せず,弁護士に相談された方がよいかも

しれません。