経年性変化と後遺障害等級12級13号の認定

交通事故のむちうちの事案において、脊椎の変性所見があったとしても、

それが経年性の変性である場合には、自賠責保険における後遺障害等級12

級13号は認定されないといわれることがあります。

しかし、結論としてそれは正しくはありません。

後遺障害等級12級13号が認定されるためには、局部に頑固な神経症状

を残すものであることが必要です。

局部に頑固な神経症状を残すものであるとされるには、他覚的所見により

医学的に証明できることが必要です。

上記証明ができれば、経年性変化による変性所見であったとしても、後遺

障害等級12級13号が認定される可能性があるのです。

実例として、経年性変化により後遺障害等級12級13号が認定された例

もあります。

この時の自賠責は、「提出の画像上、経年性変化に伴う脊髄への圧迫所見

が認められること」を指摘し、合わせて「画像所見と整合する腱反射等の神

経学的検査における異常所見が認められること」等を指摘して、結論として

後遺障害等級12級13号を認定しました。

確かに、経年性変化に伴う脊髄への圧迫所見だけでは、医学的に証明でき

るとはいえず、14級9号にとどまるとの認定をされると思われます。

しかし、それに加えて神経学的検査の結果もあると、後遺障害等級12級

13号が認定される可能性があるのです。

弁護士でもこのことを知らない可能性があり、認定される可能性がないと

の説明を受ける可能性がありますので、知っておくとよいかもしれません。

後遺障害で弁護士をお探しの方はこちら

休日の保釈

弁護士の仕事の一つに保釈申請があります。

保釈は、起訴後も勾留されている被告人を、留置施設などから解放する

手続です。

保釈の申請、保釈の決定は、通常平日に行われますが、保釈決定の出る

曜日時間帯や保釈金の準備の関係で、保釈金の納付が休日にずれ込むこ

ともあります。

 

そもそも保釈金の納付は裁判所で行います。

裁判所は原則として平日しか空いていません。

仮に、保釈金の納付などを平日しか行えないとすると、ゴールデンウィ

ークなどの長期休暇の場合、せっかく保釈決定が出されても、実際に保

釈されるまでに相当な日数経過してしまうこともあり得ます。

そうすると、被告人の身体拘束が不要に長期化してしまい、被告人にと

っての不利益が大きくなってしまいます。

そこで、裁判所は、休日であっても事前に納付日や時間を調整した上で

保釈金の納付を受け付けることがあります。

 

裁判所によって異なる可能性があるため断言はできませんが、休日の受

付の場合、通常、平日の受付の場合とは異なる入り口から裁判所に入る

ものと思われます。

東京地方裁判所の場合、夜間の令状受付の入り口から入ります。

その上で出納課にいき、保釈金を納付します。

保釈金は、機械で数えて間違いがないか確認されます。

間違いなく納付できれば、裁判所から検察庁に書類が送られ、検察庁か

ら勾留施設に連絡がいき、保釈されます。

 

違法な給与ファクタリング

給与ファクタリングとは、給与債権を買い取ってもらう資金調達方法をいいます。

給与ファクタリングを利用すると、一般的に、手数料を引かれた金額を給料日よりも前に現金で

手に入れることができます。

給与ファクタリングは、借り入れではないため、いわゆるブラックリストに載っている方でも利

用できる等のメリットがあるようです。

 

給与ファクタリングを利用する方が増えているようですが、給与ファクタリングの利用には注意

が必要です。

まず、給与ファクタリングの多くは、実質的にかなり高額の利息を取られるということです。

名目は手数料などとされているため、高額の利息を取られているという認識を持ちにくいことも

あるようですが、実質的な年利が1000%を超えるような極めて高額の利息を取られているこ

とがあるようです(警視庁のホームページ参照)。

また、かなり悪質な取り立てを受けることもあるようです。

給与ファクタリングを行う業者は、本来貸金業者として貸金業登録をする必要があります(金融

庁のホームページ参照)。

しかし、貸金業登録せずに給与ファクタリングを行っている業者も多数いるようです。

そのような業者はいわゆる「ヤミ金」であり、そのような業者の給与ファクタリングを利用する

と、悪質な取り立てを受ける可能性もあります。

いわゆるヤミ金の取り立ての場合、大声で恫喝される、勤務先に連絡される、早朝、深夜に取り

立てにくるなどが考えられます。

 

ヤミ金業者が営む給与ファクタリングは、利用しないように気を付けてください。

また、万が一利用してしまった場合には、弁護士等に相談をしてください。

任意整理

任意整理とは、債務整理の一つで、各社と個別に交渉して返済額、支払方法等を決める

手続です。

 

任意整理のメリットとしては、柔軟な対応が可能であるという点が挙げられます。

任意整理は、複数債務がある場合に、特定の債務だけを対象とすることもできます。

例えば、勤務先から給与を前借しているような場合や親族が保証人となっている場合

に、これらは任意整理の対象とせず、他の債務のみを対象とすることができます。

 

また、債権者ごとに条件を変えることもできます。

たとえば、A社に対しては、5年60回分割とし、B社に対しては10年120回分

割とすることもできます。

親族に対しては猶予期間を長めにもらい、金融機関を優先して返済するということも

可能です。

 

このようなメリットを重視して、任意整理を選択する方も多くいます。

 

これに対し、任意整理のデメリットとしては、強制力がないことが挙げられます。

任意整理は個別交渉であり、交渉に応じる義務も合意する義務もありません。

そのため、例えばA社との間では5年60回分割での支払いで合意できていたと

しても、B社が3年36回分割での支払でも合意しないということがあり得ます。

1社でも合意できない債務があると、それだけで任意整理ができない、というこ

ともあります。

 

任意整理のメリット、デメリットは上記以外にもあります。

任意整理をするかどうかは、上記も含めたメリット、デメリットを踏まえて判断

する方がよいと思います。

仮に、任意整理ができないとなると、破産や再生を検討しなければならないこと

もあります。

 

任意整理についてお考えの方は、上記を踏まえて検討し、少しでも不明な点、不

安な点があれば、弁護士等の専門家にご相談されると安心です。

交通事故発生状況

一般財団法人東京都交通安全協会作成の安全運転のしおりによれば、

令和元年中の全国における交通事故発生件数は38万1237件、

死者数は3215人、負傷者数は46万1775人とのことです。

交通事故発生件数と負傷者数は、15年連続して減少していると

のことです。

都内に限れば、令和元年中の交通事故発生件数は3万0467件、

死者数133人、負傷者数3万4777人とのことです。

いずれも平成30年と比較して減少しています。

 

また、一般社団法人日本自動車販売協会連合会によれば、令和2年

の新車販売台数は、普通乗用自動車、小型乗用自動車、普通貨物自

動車、小型貨物自動車、バスの販売台数は前年比87.7%とのこ

とです。

参考リンク

令和2年は、コロナの影響があって台数が減少している可能性があ

りますが、平成30年、令和元年も前年比100%未満のようです

ので、新車の販売台数は減少傾向にあるようです。

実際に走行している車両が減少しているかはわかりませんが、上記

の数字からすれば、減少しているかもしれません。

 

交通事故にあわれて苦しまれている方はたくさんいます。

走行している車両が減少すれば、交通事故も負傷者数も減少す

る可能性があります。

それにより、交通事故で苦しまれる方が少しでも少なくなるとよい

と思います。

 

ただ、弁護士法人心に相談される交通事故事件数は、あまり減少

している感じはしません。

それだけ、まだまだ多くの方が苦しまれているということだと思

います。

これからもそのような多くの方の力になれればよいと思います。

 

債務承認

貸金業者からの借り入れについては、最終取引から5年が経過することで時効

により消滅させることができます。

一部誤解をされている方もいますが、5年が経過したことで自動的に消滅する

のではなく、借り入れを時効により消滅させると伝える(「援用の意思表示」

等といわれます。)ことではじめて消滅します。

 

最終取引から5年が経過していても、借り入れた時効消滅しない場合もありま

す。

その一つとして、債務承認があります。

例えば、自分が借り入れをしていることを認めたり、一部を返済した場合が債

務承認に該当します。

5年経過前だけでなく、5年経過後であっても、債務承認してしまうとその時

点からさらに5年間が経過しなければ、借り入れを時効により消滅させること

はできなくなります。

 

貸金業者からの督促において、まず1000円を入金してくださいと言われた

り、督促の紙に同様の記載がされていることがあります。

1000円返済することで、返済方法等について交渉に乗るかのような説明が

されていることもあります。

これは、返済という債務承認行為を行わせ、借り入れが時効消滅してしまうこ

とを防ぐために行われているものと思われます。

督促を受けた人は、1000円を入金することで、返済が猶予されたり減額さ

れたりするのではないかと期待し、1000円を入金してしまうと思います。

1000円を入金してしまうと、本来であれば時効により消滅させられたかも

しれない借り入れが、その時点では時効により消滅させられなくなり、支払い

をしなければならなくなるのです。

 

長期間返済していなかった借り入れについて督促を受けた場合には、すぐに指

示されたことを実行せずに、まず弁護士に相談した方がよいと思います。

文書送付嘱託

弁護士の仕事として裁判上必要な文書を入手する方法として、文書送付嘱託という手

段があります。

文書送付嘱託は、民事訴訟法226条に規定された制度です。

 

文書送付嘱託を利用する場合、利用したい当事者が裁判所に文書送付嘱託申立書を提

出します。

文書送付嘱託申立書には、①開示すべき文書の表示、②文書の所持者、③証明すべき

事実を記載します。

場合によっては、送付の必要性についても記載します。

ただ、送付の必要性については、状況に応じて記載する場合と記載しない場合があり

ますが、多くの場合記載されていないと思います。

私が行う場合も、送付の必要性については記載していませんし、今のところ特に支障

が生じたことはありません。

文書送付嘱託申立がされると、裁判所は、相手方当事者の意見を聞いて嘱託するかを

判断します。

体感でしかありませんが、嘱託されない場合は少ないように感じます。

 

裁判所からの嘱託を受けた第三者の対応はまちまちですが、多くの場合、嘱託に応じ

ていただけるように思います。

直接の交渉では文書が提出されない場合でも、裁判所からの要請であれば出す、とい

われることも少なくありませんので、やはり裁判所からの要請である、という点は大

きいように思います。

 

文書送付嘱託を利用する場合としては、カルテ開示、金融機関の取引履歴、通信業者

の通信履歴等を取得したい場合があります。

うまく活用すれば、有利な証拠を得ることができますので、必要な文書がある場合に

は活用を検討するとよいと思います。

 

 

財産開示手続

裁判で勝っても相手方の財産状態がわからず,実質的に回収できないことがあります。

ない袖は振れないなどということもありますが,お金を持っていない人から金銭を回収

することはできません。

 

ただ,間違いなくないことがわかっていることは少なく,あるかないかもわからない,

というケースがかなりあるように感じます。

そういったケースでは,回収可能性を考えて,弁護士に依頼することを躊躇する,とい

うこともかなりあります。

相談を受けていても,やはり,回収可能性がネックになり,依頼はしないという方も多

くみてきました。

 

相手方の財産状況がわからない場合,相手方の財産を調査する補法として,弁護士会を

通じた照会手続をよく使います。

知っている銀行口座の照会,各種引き落とし口座の照会,保険契約の照会などはよく使

います。

現地調査をしたうえで,相手方の所有するものと思われる車両があれば,車両の所有者

の照会などをすることもあります。

それにより,ある程度あたりがつけられれば,強制執行手続します。

 

それでも財産状況がわからない場合の手続として,財産開示手続があります。

以前は,財産開示手続はあまり有効な方法ではありませんでした。

なぜなら,制裁規定が弱いなどの問題があったからです。

それでも,財産開示手続を利用することで,回収ができたケースもありました。

 

しかし,今年の民事執行法改正により,財産開示手続の利用可能性はかなり高まったと

いえます。

そのような中,改正後の民事執行法による財産開示手続に出頭しなかったケースで,初

の検挙者が出ました。

実際に検挙されたケースが出たことにより,今後,同様のケースでは検挙される可能性

が高いと思われます。

今後は,財産開示手続が無視されるケースは減少すると思われ,以前よりも実効性が髙

まり,利用率も上昇するのではないかと思われます。

 

再度の後遺障害

交通事故によりけがをし,痛み等の症状が残った場合,自賠責保険等で後遺障害等級認定がされ,

一定額の保険金が支払われることがあります。

自賠責保険での後遺障害等級認定は,同一部位(体の箇所)に同一の後遺障害等級は認めません。

そのため,例えば,一度首の痛みについて後遺障害等級14級9号が認定された場合,同じ首の

痛みについて後遺障害等級14級9号が認定されることはありません。

 

首の痛みではなく,肩の痛みなど,部位が異なる場合には再度14級9号が認定されることはあり

ます。

 

また,同じ首の痛みであっても,以前に認定された等級よりも高い等級であれば認定されることが

あります。

たとえば,一度首の痛みについて14級9号が認定されているものについて,12級13号の認定

がされるような場合です。

 

自賠責では上記のとおりですが,裁判の場合には,同一部位に同一の後遺障害が認定される場合が

あります。

自賠責では,加重障害の要件を充たさないと認定され,非該当になっていることを認めつつ,それ

を前提に,14級相当の神経症状の残存が否定されたものとはいえず,痛みやしびれの症状が継続

していること,前回事故から一定期間が経過し,神経症状は相当程度軽減していたとして後遺障害

についての賠償を認めたケースもあります。

 

過去に一度後遺障害等級認定を受けていたとしても,再度後遺障害についての賠償を受けられるこ

ともあります。

そのようなケースでお悩みの方は,一度弁護士に相談してみるとよいと思います。

間接強制却下に対する執行抗告

面会交流を認める調停や審判が成立したものの,子を監護する親が面会交流に応じない場合,

面会交流を求める親は,間接強制をすることができます。

間接強制が認められれば,子を監護する親は,面会交流の応じるまで,毎月一定額の支払義務

を負いますので,間接的に面会交流の実現を図ることができます。

ただ,面会交流の間接強制は,必ずできるものではなく,一定の条件がそろっていなければ

認められず却下されることもあります。

例えば,面会交流の内容が抽象的であるような場合です。

面会交流の頻度が月〇回程度とされていたり,面会の場所が○○近辺とされていたり,面会の

時間が午後などの抽象的なものであったりなどすると,間接強制ができないこともあります。

 

これを避けるためには,調停条項や審判条項を具体的に特定しておく必要がありますが,必

ずしも裁判所が具体的に定めてくれるとは限りません。

むしろ,面会交流を円滑に実現するために,あえて抽象的にして両親の協議により柔軟に実

行していくようにするケースもあります。

具体的にしようとすると,双方の意見の対立が激しくなり,かえって面会交流が実現しにく

くなるということもありますので,そのあたりの判断はなかなか難しいところです。

 

仮に,間接強制が却下されたとしても,その判断に対し,執行抗告を申し立てて争うことも

できます。

執行抗告をする場合には,抗告事件について審理する担当裁判所宛の執行抗告状や抗告理由

書を,却下の判断をした裁判所に提出して行います。

一般論として,抗告審で却下の判断を覆すことは難しいといってよいと思いますが,可能性

がないわけではありませんので,却下の判断に納得できない場合には,執行抗告も検討して

みてもよいかもしれません。

 

執行抗告が認められる可能性がどの程度あるかは,個別のケースにより異なりますので,

執行抗告を検討されている方は,弁護士に相談されるといいと思います。