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不貞慰謝料の故意過失
今日は、事務所内で不貞慰謝料についての研修を実施しました。
不貞慰謝料は、相談件数も多く、弁護士が相談を受ける可能性が高い類型の事件といえます。
不貞を認めて慰謝料の交渉に関する相談もありますが、中には、不貞をするつもりはなかった、不貞とは思っていなかったという相談がされることもあります。
不貞慰謝料請求が認められるためには、故意・過失が必要となります。
この点について、不貞をした側からは、既婚者であるとは知らなかった、という話が出ることがあります。
この主張は、通りそうに見えて意外と通らないことが多いです。
裁判所は、様々な事情から、故意、過失を認定しており、否定されるケースはかなり限られるようです。
また、婚姻関係がすでに破綻していたという主張もよくされますが、こちらもなかなか通らないようです。
別居していただけでは婚姻関係の破綻は認められません。
離婚に向けた動きが具体的に取られているなどの事情がないと、なかなか婚姻関係破綻とは認められないようです。
不貞の際には、すでに離婚している、離婚に向けて進んでいる、独身であるなどの話が出ることが多いです。
調査義務までは求められていないように思われますが、ただ漫然と信じただけでは、不貞慰謝料の支払い義務は免れられません。
100%弁済
個人再生において、100%弁済となることがあります。
100%弁済とは、債務を全額返済することです。
全額返済するのであれば、個人再生手続きをとる必要はないのではないかとの疑問が生じますが、なお、メリットがあるとして100%弁済を選択することがあります。
100%弁済での個人再生を選択するメリットの一つとしては、強制的に長期分割とすることができるということが挙げられます。
100%弁済をする際に、一番最初に選択肢として検討するのは、任意整理ではないかと思います。
任意整理は、必要な資料も少なく、負担も少ない手続きですので、任意整理で解決できるのであれば任意整理を選択するのが良いといえます。
ただ、任意整理は、個別に各社と分割の合意をする手続きであり、強制力がないというデメリットがあります。
債権者が分割払いを認めない場合や、高額の頭金を要求するようなケースでは、任意整理ができないことがあるのです。
このような場合でも、個人再生であれば、裁判所の認可を得て分割払いとすることができます。
これが100%弁済の個人再生を行うメリットの一つです。
他にもメリットがある場合があります。
このような手段もあるということを知っておくと、選択肢が広がってよいと思います。
詳細は債務整理に詳しい弁護士にご相談ください。
通訳
最近では、街で外国人の方を見る機会が増えたように思います。
街だけでなく、相談に来られる方の中にも外国籍の方がいます。
日本語が話せる場合には、日本語で話をしますが、日本語が話せない方の場合には、通訳の方を介して話をします。
弁護士法人心では、通訳の方は在籍しておりませんので、ご相談に来られる方に通訳の準備をお願いしています。
通訳の方がいる場合には、通訳の方を介して話をします。
通訳の方の話しぶりを見ていると、通訳の方ごとに通訳の仕方や言語への精通の程度、得意な分野等に違いがあるように思います。
弁護士に相談をする際に通訳の依頼をする方は、自分の使用する言語に精通した、自分に合う通訳の方を選ぶとよいと思います。
日本には様々な国から来た人がいるため、様々な言語に対応した通訳の方が必要です。
英語など、使用者の多い言語の通訳の方はたくさんいますが、限られた地域で話されるような、また日本での使用者が少ない言語の通訳の方は少ないようです。
これから外国籍の方が増えるという見解もあるようですし、ますます通訳の需要は増えてくるように思います。
通訳人の方も増えていくかもしれません。
そうなると、通訳の利用を希望される方の選択肢は増えそうです。
子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律
弁護士会から発行される雑誌に弁護士のための新法令紹介が載せられています。
今回載せられていたのは、子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部改正でした。
この法律は、もともと平成25年に作られたもので、その後、改正が加えられています。
その改正時に施行の状況を勘案し、必要がある場合には検討を加え、必要な措置を講じることとされていました。
これに応じて、関係団体からの法改正の要望も踏まえ、議論が行われ、改正案が取りまとめられました。
新法では、題名に子どもの貧困の解消に向けた対策をという言葉が使われています。
もともとは子どもの貧困対策であったものについて、明確に「解消」に向けた対策をとることが明記されました。
対策の対象は具体化され、子どもの現在の貧困の解消だけでなく、子ども将来の貧困の解消も明記されています。
また、子どもの貧困の解消に向けた対策は、貧困の状況にある者の妊娠から出産を経て、生まれた子が大人になるまでの過程の各段階において切れ目なく支援がされるように推進されなければならないとされています。
これらの実現のために、必要な支援の対象も広げています。
支援の対象者は、子ども及びその保護者であったものが、子ども及びその家族に広げられています。
公的な直接的支援だけでなく民間団体を通じた支援についても規定されています。
この法改正により、子どもの貧困の解消がどこまで進むかはわかりませんが、少しでも解消につながるとよいと思います。
弁当切り
こんにちは。弁護士の石井です。
刑事事件の世界で、弁当切りと呼ばれる手法がありました。
何を言っているかわからない方も多いと思います。
弁当とは、執行猶予のことを指しています。
執行猶予期間中の人のことを弁当持ちということもあります。
弁当切りとは、執行猶予期間を満了させ、前の罪の刑の執行を免れる手法のことです。
これまでは、執行猶予期間中に罪を犯しても、刑の確定時点で前の刑の執行猶予期間が満了していれば、前の刑の執行猶予は取り消されませんでした。
そのため、執行猶予期間中に罪を犯した場合、裁判手続きを長引かせることで刑の確定時期を遅らせることで執行猶予期間を満了させ、前の刑の執行を受けないようにする手法がとられることがありました。
この手法を弁当切りといいます。
この弁当切りが今後できなくなります。
刑法改正により執行猶予期間が経過しても、新たな罪について公訴提起がされている場合(裁判されている場合)刑の言い渡しの効力は続くようになります。
そして、新たな罪について、拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予がつかないときは、前の刑の全部の執行猶予は原則として取り消されます。
要するに裁判手続中は、前の刑の執行猶予期間が経過しても、前の刑の執行はなくならず、いわゆる弁当切りの手法は使えなくなったのです。
弁護士費用保険
現在販売されている保険はたくさんのものがありますが、その中の一つに弁護士費用保険があります。
弁護士費用保険は、自動車保険に付帯されている弁護士費用特約が比較的多くの方に知られているように思いますが、それ以外にもいろいろな弁護士費用保険があります。
例えば、火災保険に付帯されている、日常生活上で第三者からの不足の損害を受けた場合に使える弁護士費用保険があります。
弁護士費用保険単体で発売されている保険もありますし、刑事事件を対象とする弁護士費用特約も発売されています。
他にも、近年のネットトラブル増加を受けて、ネットトラブルを対象とする弁護士費用保険もありますし、近隣トラブルに対応する弁護士費用保険などもあります。
今後も、様々な保険が発売されるものと思われます。
弁護士費用保険は、欧米諸国の方が整備が進んでおり、各国での保険の拡大・発展状況を日弁連が調査して保険会社と共有しているようです。
その甲斐あってか、各保険会社において、多種多様な弁護士費用保険の開発が進められているようです。
弁護士費用保険があると、弁護士に依頼しやすくなり、泣き寝入りが減少すると思われます。
欧米諸国と比べるとまだまだ補償範囲は広くはありませんが、今後これが拡大されることによって、より多くの方が弁護士に依頼することができ、泣き寝入りすることがない状況になると期待されます。
23区内の裁判所
先日、交通事故事件の調停があり、東京簡易裁判所に行きました。
東京簡易裁判所というと、霞が関をイメージする人が多いと思いますが、交通事故の調停は、錦糸町にある墨田庁舎で行われます。
もともとは、もっと多くの庁舎が東京23区内にあったようですが、今ではほとんどなくなっています。
墨田庁舎以外にも、東京23区内には、いくつか裁判所が置かれている場所があります。
たとえば、比較的近年にできた、中目黒庁舎があります。
ここは、ビジネス・コートとも呼ばれており、知財、商事、倒産関係の事件の対応がなされています。
また、目黒区には民事執行センターが置かれており、民事執行についての対応がなされています。
各分野の事件を集中的に対応することで、効率性、利便性が高まるのかもしれません。
近くに裁判所があると便利である反面、行き先を間違える可能性も出てきます。
当日行き先を間違える可能性があるだけでなく、事前に予定を組む際に、霞が関に行く前提で予定を組んでしまい、予定通りの時間に到着できない可能性もあります。
裁判所が各地にあるということを知っておくことで、間違える可能性を少なくできるような気がします。
普段よく裁判所を利用する弁護士の方が、間違えやすいかもしれないですね。
取調べの録音・録画
最高検察庁から全国の高等検察庁、地方検察長に対し、在宅のまま捜査する事件のうち、起訴が見込まれ供述が立証上重要なものや、取り調べの状況をめぐって争いが生じる可能性があるものについて録音・録画を試行するよう通知がされたようです。
取り調べの録音・録画は、身柄拘束されている事件、つまり逮捕、勾留されている事件について行われていましたが、この対象を拡大するということです。
取り調べは、密室で行われるため、警察官や検察官による威圧的な取り調べやミスリーディングな取り調べにより誤った内容の供述調書が作成されることがありました。
これが冤罪の原因となっているということで、取り調べの録音・録画が法律により義務付けられましたが、その対象は身柄拘束されている事件に限定されていました。
その後も、警察官や検察官による不適切な取り調べが相次いだことを受けて、在宅事件にも対象を拡大するに至ったようです。
取り調べの録音・録画がされていてもなお、不適切な取り調べが行われており、今回の拡大を受けてもなお、不適切な取り調べが完全になくなるとは思いませんが、一定数、減少することは期待できるのではないかと思います。
弁護士としては少しでも冤罪が少なくなればと思います。
精神医学
刑事事件では、精神鑑定が行われることがあります。
そのため、刑事事件に携わる弁護士は、精神鑑定について知っておくと有益だと思います。
先日、精神医学に関する研修を受講しました。
東京都立松沢病院の精神科医の先生が講師を務められており、精神医学、鑑定についての見識を深めることができました。
精神鑑定の際、精神科の先生がどのようなことを意識しているか、どのような事情から鑑定を行っているかなどを知ることができ、とても有益でした。
妄想にも種類があり、それが鑑定において意味を持つこと、病気と思われるものでも一部はその人の人格で説明できてしまうことなども指摘されており、専門家でも理解が容易でないことが分かり、精神医学の難しさを感じました。
また、精神科医によって、どういった点を重視するかが異なること、法律でも同じことがありますが、考え方が複数あり、いずれの考え方に立つかで結論が異なる可能性があることなどがあることなどが指摘されており、鑑定の難しさもわかりました。
どの鑑定人に当たるかによって結論が異なってしまうという不安定さがあるという問題はあるものの、実務上鑑定結果が重要であることは間違いないため、弁護士としては、これらのことを踏まえながら、対応していかないといけないなと思いました。
無罪判決
こんにちは。弁護士の石井です。
刑事裁判で、犯罪事実が認定されないときに、無罪判決が出されます。
以前に比べると、無罪判決のニュースをみることが増えたように感じます。
刑事裁判では、合理的な疑いを入れない程度の証明が求められ、この証明責任を検察官が負っています。
具体的には、裁判官が、通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることができた場合に有罪判決が出されます。
無罪判決が出されるということは、検察官が、刑事裁判で求められる程度の証明ができなかったということです。
証明ができなかった理由は事件ごとに様々ありますが、十分な証拠がなかった場合がその一つとして挙げられます。
どこまでの証拠があれば、証明の程度として十分かということは、一概には判断できませんが、少なくとも、起訴して刑事裁判とした以上、検察官としては十分な証拠が揃っていると判断していたはずです。
それにもかかわらず、無罪判決が出されるということは検察官の見立てが結果論ではありますが間違っていたということになります。
証明は、刑事裁判だけでなく、民事裁判でも求められるものです。
ただ、刑事裁判で求められる証明の程度は、民事事件において求められる証明の程度とは異なっており、刑事事件で求められる証明の程度の方が重くなっています。
無実の人が、誤って有罪とされ、処罰されることを防ぐために、このようなルールが設けられています。
無実の人が処罰されることのないようにしないといけません。